企業概要
The Trade Desk社について
「需要」マーケット・ユーザー(顧客)
デジタル広告は近年目覚ましい成長を遂げています。 日本でもTV広告売上をネット広告が上回りました。 アメリカではさらにその傾向が強い。 一つの要因はネット広告の進化。単純なバナー広告から動画、音声などに発展しています
もともとネット広告の発端は小さなバナー広告。ネットのトラフィックが伸びるにつれて GOOGL が広告掲載を管理するツールなどを提供し始めました。
市場の一つの大きな流れはRokuをはじめとするCode-Cuttingの進行、CTV(コネクテッドTV)の導入加速があります。世界のテレビ広告市場は広告市場全体の30%ほどの構成比であり、$180Bnほどの超巨大市場です。
Rokuの広告売上成長は70%ほどですが、TradeDeskのコネクテッドTVセグメントの売上成長はYoYで100%を越えているそうです。
電通の調査によると、世界の広告の総支出は$600Bnほどですが、そのうちのどの程度がプログラマティック広告に置き換わっていくのかがポイントです。
今のTradeDeskの主戦場はディスプレイ広告ですが、それだけで$50Bnほどの市場規模になっています。DSPベンダーの取り分は20%ですので、$10Bnくらいの売上になります。
こちらの市場調査では、世界のDSPベンダーの売上の合計(市場規模)を集計した調査になりますが、2019年時点での市場規模は$9,770Mnでした。
TradeDeskの昨年の売上は$661Mnですので、市場シェアとしては昨年時点では6.8%程度だった事が分かります。
一方、TradeDeskの売上は83%ほどが米国内の売上です。USマーケットだけに絞るとどうなるでしょうか?
- 2019年は約$550Mnほどの売上
- 2018年時点、世界全体に占めるDSP市場の内米国の割合は38%
- 2019年の米国DSP市場は約$3,700Mnと想定
そこから考えるとTradeDeskの米国内のシェアは14.8%となります。
「供給」サービス・商品・問題解決
Trade Deskのビジネスモデル上の特徴としては次の2つが挙げられます。
- あくまで広告の売り主(メディア)からは独立し中立性を保っている
- マネージドサービスの領域には踏み込まず既存の広告代理店からの中立を保っている
1. についてはDSPなのである種当たり前なのであまり深く説明する必要は無いかなと思いまが、2.については重要だと思います。
Trade Deskの提供する価値は、あくまでテクノロジーの提供であって、広告運用サービスを提供するものではないです。
つまり「サービス」の部分に入り込まずに、大手広告代理店と競合する立ち位置を回避していると言えます。
Trade Deskは次のようなプロダクトを提供しています。
- コネクテッドTV (CTV)
- オーディオ広告
- モバイル広告
- ネイティヴ広告
- 動画広告
- インベントリ & マーケットプレイス
- データマネジメントプラットフォーム(DMP)
- クロスデバイスターゲティングと効果測定
- エンタープライズ API™
- ポリティカル・ターゲティング
- 認定サービスプロバイダー
- 人工知能「Koa™」
- プランニングツール「Planner」
Trade Deskが提供するサービスのプログラマティック広告とは、ネット広告をリアルタイムで入札形式で買い付ける形式の広告
ネイティブ広告やアドネットワーク | プログラマティック広告 | |
---|---|---|
方法 | 手動で設定 | 様々なメディア横断で自動で買付 |
対象 | どこに広告を出稿するのか? | どの様な属性の消費者に向けて広告を出稿するのか? |
面一 | 人の属性 | |
メリット/デメリット | 一つ一つ考え手動で設定するため手間がかかる | イチイチ広告枠を考えて出稿作業する手間が抑えられる |
ビジネスモデル
2009年に会社を設立し、プロダクトを正式リリースしたのは2011年5月でした。
プロダクトリリース当初のTrade desk上での取引額は「8セント/日」だったそうですが、2019年では「10,000,000ドル/日」を突破と創業初期から快進撃を遂げています。
マネタイズについては基本的には広告取引額の20%をTrade Deskを貰い受けるという従量課金型のビジネスモデルとなっています。
2016〜2017年には20%を割っているものの、2018年以降はテイクレートが盛り返し21%にまで達しています。付随サービスを色々と追加し、追加の売上が取れ始めていると予想できます。
2014年から2018年までの間は継続してYoY50%を越える成長となっていましたが、2019年に入ってやや減速気味となっています。
これは、2010年代前半から市場が急激に立ち上がり始めたWeb向けのプログラマティック広告の需要増加が落ち着き始めているからだと思われます。
しかし、世界最大手の広告代理店のWPPやOmnicomなどもTrade Deskの顧客の様でこの2社及びグループ会社からの売上だけで全体の20~30%を占めていることは注意が必要です。
従量課金型&一部顧客への大きな依存、Fastlyと似ていますよね。この様なビジネスモデルは伸びる時は凄いのですが、急に業績予想を大きく下回ったりする事があるので、注意は必要です。
事業パートナー
Trade Desk連携先としては、7,000社以上あり以下の様に非常に豊富な連携先があります。
GoogleやYahoo!、Aol、msnなどの検索サイトはもちろんの事、BBCやCNBCなどのニュースメディア、RokuやSpotifyなどの広告モデルのエンタメサービスなど、色々な接続先に広告を配信することができます。
AlibabaやTencent、Baiduなどの中国系企業との連携というのも強化しているそうです。以下の様に米国のほか中国・香港や日本、東南アジアなどにもエリアを広げており、特に中国市場での売上拡大も今後期待できると思います。
配信先を決める際の基礎になるDMPの拡充も非常に重要です。その点においてもTrade Deskは色々なデータプロバイダーからデータ提供を受けてDMPを強化、顧客が最適な広告配信が行えるようにサポートしています。
WPPなどの大手代理店がTradeDeskを選んで使っていることからもプロダクトが他社よりも優れているということも読み取れます。
ライバル・競合他社
メジャープレイヤーだけで15社くらいの競合がいる中で、TradeDeskの米国内のシェア14.8%はまずまずな数字だと思います。
また、AmazonのFire TV上の広告プラットフォームはTrade Deskにも開放されており、米国の2大コネクテッドTVのAmazonとRokuのどちらが勝者となってもTrade Deskの業績に大きな影響が出ないというのも良いポイントの一つとなります。
立ち位置
この表で右上にいればいるほど優秀な企業という事になりますが、上記の通り、TradeDeskはLEADERの格付けを得られています。
上記のMagic QuadrantはGartnerのアナリストの評価ですが、顧客からの評価も上々です。5社だけが選ばれているGartnerのCustomer ChoiceにGoogle/Facebook/Amazonなどと並んで選出されていたりもします。
結論として、アナリスト視点でも顧客視点でも非常に高い評価を得られている所や今後マーケット自体も大きく拡大傾向にあるという観点から、あまり競合企業というものは強く意識しすぎなくても良いのかなと思います。
The Trade Desk社決算まとめ
EPS(一株あたり利益)
売上高成長率
将来の「成長ストーリー」は良好か?
粗利率はおよそ75%、今後の売上成長の予測は年率30%弱ですが、この数字だけを見ると少々株価としては高い様な気もしています。
一方でプログラマティック広告の市場は今後拡大傾向にありますし、DSPベンダーの業界リーダーとしてWPPなどの世界最大の代理店に食い込んだりしていることを考えると、年率30%を超える様な成長を維持することも十分に想定されますので、市場としてはその期待値を織り込んでいるのかなと思います。
Trade deskは、いくつかのサクセスストーリーを記事にしています。今後の動向を予測するのに役立つと思いますので、読んでみても面白いと思います。
今後も継続的にコンセンサス予想を上回り続けてくるとは思うものの、PSRが既にかなりの高水準になっている事や、従量制のビジネスモデルである事と一部の大手広告代理店に売上が偏っている事から、Fastlyの様なことが起こるリスクというのも常に頭の片隅に置いておく必要があるかなと思います。
お疲れ様でした!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
皆様も健康な投資ライフをお過ごしください。
今後も良い記事を書いていきたいので、引き続き応戦よろしくお願いします!
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