SailPoint社について
企業概要
非構造化データアクセスのID管理とガバナンスを提供するテキサス州オースティンのテクノロジー企業で、世界で1400社以上の大手企業が利用する、Identity and Access Management(IAG)ツールのプラットフォームを開発、販売している会社です。
ティッカー | 【SAIL】 |
会社名 | SailPoint Technologies. Inc |
カテゴリー | IT・通信 (IT & Communications) |
設立 | 2005年 |
CEO | ケビンカニンガム氏 |
上場 | 2017年11 月 |
時価総額 | 4.10億ドル(億円) |
従業員数 | 1168人 |
「需要」マーケット・ユーザー(顧客)
コロナの影響でリモートワークの拡大や、クラウドサービス利用増加の流れから、セキュリティ対策をよりしっかりする需要が強くなりました。
顧客数は2019年比で2020は約23%増加しています。
問題点
従業員や顧客がクラウドサービスを利用するってことで、企業システムの複雑化は極まる一方で、デジタルID管理の作業もより煩雑となり、管理者にとって大きな負担となっています。
手作業で名前とかEメールアドレスとか、所属とか諸々を打ち込むのってしんどい
Oktaのシステムは、この作業をAIが自動でやってくれるなんてなんてラクチンなんですね。
Verizon 2017のデータ侵害調査レポートによると、ハッキング関連の81%がIDを起点とした攻撃であることがわかっている。私たちのオープンIDプラットフォームは、組織とそのアプリケーションおよびデータを保護するには、従来の境界およびエンドポイント中心のセキュリティソリューションにはそれ自体ではますます不十分であり、最新のサイバーセキュリティ戦略の重要な基盤層であると考えています。
目論見書より
以下がそれぞれの業種別の顧客割合
・製造、エネルギー、産業(17%)
・銀行(16%)
・テクノロジー/メディア/電気通信(13%)
・ファイナンス(12%)
・保険(11%)
・政府、教育、非営利団体(10%)
・ヘルスケア(10%)
・小売および消費者(8%)
(パーセンテージは2017年9月30日現在の顧客数)
「供給」サービス・商品・問題解決
SailPointは主に、重要なシステムやデータへのユーザーのアクセスを管理するためのID・ガバナンス・ソフトウェアを企業向けに販売しています。
オンプレミス・ソフトウェアとクラウドベースのソリューションを問わず、 特許取得済みの人工知能(AI)および機械学習(ML)テクノロジーを搭載した、SailPoint Predictive IdentityTMプラットフォームを提供しています。
つまり、どのユーザーが、どこにアクセスできるかを適切にコントロールすることで、セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスの維持が図られる、というようなインテリジェンスを提供しています。
管理に伴う膨大な作業をAI機能に任せられるという点で、セキュリティー管理者にとっては膨大な作業を大幅削減することができるんです。
IGA事業の主力製品は以下の4本柱があります。
・Identity IQ
・Identity Now
・Security IQ
・Identity AI
SailPoint社の強み、弱み
SailPointは、OKTAが提供しているクラウドベースのシングルサインオン(SSO)のビジネスも持っています。
今後競合優位性という観点でいえば、OKTAのやってるようなクラウド系のシングルサインオンのビジネスも手掛けている点がSailPoint社の強みです。SECaaC+IAGも含めてパッケージでサービス提供できるSailPointは非常に強いと考えられます。
プラットフォームはかなり柔軟性があって、各種データベースや、アプリに対して多くのコネクティビティ性が確保されてる点が強みです。
データベース:Oracle
企業向けアプリ:Salesforce
コラボアプリ:Azure、Geogle G Suite、Office365、SharePoint、WebEx
ITSMツール:ServiceNow
OSのプラットフォーム:RedHat、Solaris、SUSE Linux、Unix、Windows
ビジネスモデル
主な収益はライセンスとサブスクリプションになります。
売り上げのうち、9割近くをサブスクとライセンスで占めていて、売り上げの50%以上がサブスクです。
2015年のサブスク売り上げ比率が32%にだったのに対し、2020年で約50%まで増加してきています。継続的に安定収益が得られる仕組みは高評価です。
主なマーケットは北米の売り上げが75%を占めています。その他の地域でも売上は伸ばしていますが、伸び率が小さいのでここを如何に飛躍できるかがカギです。
プライシング(値付け)
SailPointの値付けは、
$92M(2020/2Qの売上)/1582企業=$6000/企業
1か月あたりのライセンス+サブスク利用料は、$2000/月くらいが想定できます。
一方、OKTAは、
$200M(2020/2Qの売上)/6000企業=$2300/企業
1か月あたりのライセンス+サブスク利用料は、$630/月くらいが想定できます。
SailPointの製品はOKTAに比べるとかなり高く、逆にそれだけ高い利用料払っても価値があるとも言えます。
ライバル・競合他社
調査会社のGartnar, Inc.によると、5年連続でアイデンティティガバナンスと管理のマジッククアドラントのリーダーに選出されているとのことです。
OKTAのようなSECaaS(Security as a Service)のビジネスとの違いについて
SECaaSの部分は競合するものの、IAG (International Auditing Guidelines) の部分についてはOKTAのビジネスモデルとは競合はしません。
OKTAの提供するサービスはクラウド型ID管理・統合認証サービスであり、SECaaSにログインすれば、各サービスやアプリへシングルサインオン(SSO)が可能なプラットフォーム、いわゆるゲートキーパーの機能を提供しています。
SailPointはSSOでクラウドやアプリにアクセスする際に、ガバナンス(誰が、誰を、どのようにアクセスさせるべきか?)の定義に沿ってアクセス管理し、セキュリティリスクを最小化する、というソリューションを提供するカテゴリーになるので、SailPointの提供するプラットフォームの方がセキュリティーポリシー上の上位概念に位置することになります。
SailPointが言うには、OKTAのようなIDaaS(
Identity as a Service)のサービスとSailPointのIGA(Identity Governance & Administration:ID・アクセス管理)サービスを統合することで高度なサイバーセキュリティーシステムを維持・運用できると推奨しています。
グロース(成長)株か?バリュー(割安)銘柄か?
この銘柄はテンバガー株になりうるか!?
以下のグロース株5つのポイントに沿って確認していきます。
1) 決算が予想を上回っているか?
EPS(一株あたり利益)
株価に対する1株当たりの純利益の成長率は、2019年から2020年Q2の成長率で見てもSailPointは121%で、OKTAの40%と比べてかなり高い水準です。
直近の2020年Q2決算では、EPSが予想EPSを「0.19ドル」上回っています。
2020年 2Q決算 | 実績 | 予想 |
---|---|---|
EPS(一株利益) | 0.15ドル | -0.04ドル |
Q3ガイダンス | コンセンサス予想 |
---|---|
EPS(一株利益) | -0.05ドル |
売上高成長率
直近の2020年Q2決算では、売上高が予想売上高を「23.44Mドル」上回っています。
2020年 2Q決算 | 実績 | 予想 |
---|---|---|
売上高 | 92.46M ドル | 69.02M ドル |
売上成長率YtoY | 46.63% | – |
Q3ガイダンス | コンセンサス予想 |
---|---|
売上高 | 83.51Mドル |
2020年Q3決算は11/6予定
利益率(Margin)
OKTAと比較すると売上は半分程度で、OKTAはまだ赤字なのに対してSailPointは既に黒字に転じています。
SAIL | |
---|---|
Gross Margin(粗利率) | 78.40% |
Operating Margin(営業利益率) | 3.00% |
Profit Margin(純利益率) | 1.10% |
2) 株価チャートが持続的な上昇トレンドか?
理想的な右肩上がりのチャートを示しており、決算の度に窓をあけて株価が上昇しました。
下のチャートは、SAILの価格帯別出来高になります。
長期だと15〜30ドル、短期だと35〜40、45ドル付近に購入ボリューム層があることが分かります。
3)時価総額が比較的小さいか?
現在の時価総額は4.10Bドル(2020/10/6)
4) 今の株価(バリュエーション)は、割高か割安か?
現在の株価は割高
現在の株価 : 45.5ドル
これらの算出方法については、下の記事で解説しています。
5) 将来の「成長ストーリー」は良好か?
今後どれだけ顧客数増やせるかがSailPointの今後の成長を決めると言っていい。2018年に日本法人も設立したりしてるので、地道に営業活動して広めていってるというイメージです。
コロナ過でクラウド利用が急増したことから、突貫工事的にSECaaSが先行してに広まってるのに対し、IAGはまだまだ置き去りにされてる部分だと思います。
今後DX(デジタルトランスフォーメーション)の生活が定着していく中で、IAGのセキュリティーポリシーが重要視されるようになってくると、SECaaSとIAGの両方のビジネスを持つSailPointが競争優位性を発揮し、既存ビジネスのIDaaSも奪取することができればSailPointは次のOKTAまでに成長する可能性は十分にあります。
お疲れ様でした!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
この記事の情報ソース
目論見書とS-1