イナリ・メディカル社について
企業概要
- 静脈にできた血栓を除去するための器具を製造販売する医療機器メーカー
- 2011年設立されたInceptus社から2013年にスピンアウト
- 2020年5月にIPOされ、179M調達
- 値決め、19ドル。初値、41.3ドル
- 初値からおおよそ120%ほど株価上昇
ティッカー | NARI [NASD] |
会社名 | Inari Medical, Inc. |
セクター | ヘルスケア |
設立 | 2011年 |
IPO(上場) | 2020年 5月 |
CEO | William Hoffman 氏 (2015ー) |
時価総額 | 4.44Bドル |
本部 | カリフォルニア州 アーバイン |
従業員数 | 456人 |
単位:M=100万/B=10億
マーケット
会社は米国で、38億ドル程度の市場規模があると見込んでいます。2021年度の売上は1億ドル程度になるそうです。
血管には動脈、静脈があります。
動脈の分野の血栓除去デバイスは数多くありますが、静脈の血栓除去専用のデバイスはありませんでした。
イナリ・メディカル社は、この領域に他社を先駆けてフォーカスしました。そのためより効果的で、安価かつ安全な治療として注目されています。
現在最も一般的な血栓溶解薬による治療は、集中治療室での治療が必要で多量の出血を伴う場合もあります。
また、血栓溶解薬の使用が許されない患者も半数ほどに上ります。
イナリ・メディカル社のカテーテルは、この血栓溶解薬の代わりになることができます。
同製品は深部静脈血栓症(DVT)と、脚部にできた血栓が肺に移動して引き起こす肺塞栓(PE)を対象にしています。
経営陣は年間約66万8,000人がDVTを、同40万人がPEを発症すると推計しています。
両疾患は患者のライフスタイルに長期間影響しますが、PEは病院で回避可能な死亡要因の第3位でもあります。
サービス・商品
静脈の血栓が問題になるのは、大腿骨あたりと、肺になり心臓疾患や脳卒中のリスクになります。
イナリ社が製造する二つのデバイスは、FDAに認可されています。
リスクがあり値段も高い薬を使わずに血栓を除去することができます。
- 「フロートリーバー(FlowTriever)」
- 「クロットトリーバー(ClotTriever)」
これらは、血栓を除去するカテーテルで、操作も容易です。
「フロートリーバー(FlowTriever)」
深部静脈血栓症(DVT)の治療のために、大腿骨あたりの静脈血栓を除去するデバイスです。価格は6000ドル程度。
深部静脈血栓症(DVT)は、エコノミー症候群とも言われています。飛行機、車中泊、寝たきり長期入院などにより血栓ができます。
他には静脈の圧迫、手術、外傷または骨折、癌、妊娠、経口避妊薬、静脈瘤など、さまざまな要因がDVTを引き起こす可能性があります。
「クロットトリーバー(ClotTriever)」
肺塞栓症(PE)の治療のために、肺静脈血栓を除去するためのデバイスです。価格は1万ドル程度。
肺塞栓症(PE)とは、血栓が何かのアクションによって血流に乗り、心臓を通過して肺動脈を詰まらせ、急性の場合、非常に致死率が高いです。アメリカでは心筋梗塞、脳卒中に続く血管系の疾患です。
どちらも血栓を除去する方法ですが、二通りのやり方が備わっています。
まず吸引、吸引がうまくいかなければ、網のようなコイルを開き、血栓を絡めとります。
ビジネスモデル
売上原価と粗利益について
当社は、カリフォルニア州アーバインにある当社の施設ですべての製品を製造および組み立てています。
売上原価は、主に原材料、部品、直接労務費、製造間接費で構成されています。
オーバーヘッドコストには、品質保証、資材調達、在庫管理、設備、設備、運用の監督と管理のコストが含まれ、在庫ベースの報酬が含まれます。
売上原価には、生産設備の減価償却費、および送料やロイヤルティ費用などの特定の直接費も含まれます。
顧客に請求される送料は、売上原価の減少として報告されます。売上高が増加し、より多くの製品が販売されるにつれて、売上原価は絶対ドルで増加すると予想されます。
S-1資料
ライバル・競合他社
薬物治療系
薬物治療は、ウァルファリンやヘパリンなどの薬で治療します。
薬物治療の問題は、副作用であり、ICU(緊急治療室)での施術が必要になります。
病院にとっては、同じ収入でICU使用によるコストがなくなれば利益が大きくなります。
そのため、病院側も、少なくとも同じような施術効果であるならば、イナリを選択する意味がありそうです。
物理的吸引系
血栓を吸い込むタイプのデバイスが直接競合です。
競合の多くは動脈に特化したもので、静脈に特化した同社のデバイスに分がある、というのがイナリ社の説明です。
動脈と静脈では血栓の大きさが全然違い、静脈の血栓の方が圧倒的に大きいです。
イナリ・メディカル社の業績
決算
EPS、売上高ともに、オールOKです。
IPO後4回連続で決算クリアしています。
2021年 Q2 決算 | 決算良否 | 予想 | 実績 |
---|---|---|---|
EPS (ドル) | ○パス | 0.05 | 0.13 |
売上高 (ドル) | ○パス | 55.06 M | 57.40 M |
売上成長率(YoY) | +% |
2021年 Q3 ガイダンス予想 | アナリスト予想 | 会社予想 |
---|---|---|
EPS予想(ドル) | 0.08 | |
売上高予想(ドル) | 59.65M | |
売上成長率(YoY) | +% |
売上成長(損益)
利益
キャッシュフロー
今後の業績見通し、リスクファクター
成長ファクターとして5つのポイントが挙げられます。
- 米国での販売力の継続的な拡大
- 既存および将来の病院での当社製品の認知度向上と採用を促進
- エビデンスを基にした構築
- 静脈用製品のポートフォリオを継続的に拡大する
- 戦略的に隣接する市場や国際的な機会を追求する
リスクとして市場が懸念されるのは、競争激化していくことです。
同じく新興企業で勢いがあるPenumbula(PEN)などが、静脈向けでデバイスを出すことも想定されます。
この記事の情報ソース
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