- Fiverrは、世界160か国に展開するフリーランスワーカー向けのマーケットプレイスを展開しているイスラエル発の企業です。
Fiverr社について
企業概要
ティッカー | 【FVRR】 |
会社名 | Fiverr International Ltd |
カテゴリー | クラウドソーシング |
設立 | 2010年 |
CEO | Micha Kaufman氏(CEO)Shai Wininger氏(元CTO兼CPO、現 社外取締役) |
上場 | 2019年6月 |
時価総額 | 6.03Bドル |
本部 | イスラエル テルアビブ |
従業員数 | 419人 |
Fiverr社の強み、弱み
Fiverrの事業展開のスピード感

- 創業2年で”Gig”というワードの商標を取得
- スマホ初期の段階(2013年)で早くもアプリをローンチしている
- 創業9年で160か国にサービス展開
Flywheel effects

上記の様に発注者側とフリーランサー側双方のビジネスにとって良い効果が継続的に生まれ、その結果としてマーケットプレイスが発展していくことを目指していくのが基本的なビジネスの考え方となります。
サービス・商品
Fiverrの主力事業は、フリーランスの仕事のマーケットプレイス(マッチング)です。
- フリーランス(Seller)が、自分の受けれる仕事(Gig)を登録し、発注者(Buyer)がGigを探して発注するという仕組み
- 本気でフリーランスとして仕事をしようとしている人しか登録ができない様な構造になっている
Fiverrのマーケットプレイス設計思想

Fiverrは、次の4つの思想でマーケットプレイスを設計しています。
- Service-as-a-Product
- オンデマンド
- End-to-endプラットフォーム
- グローバルコミュニティ
1)Service-as-a-Product
良く見るクラウドソーシングの場合は、発注者側が任せたい仕事の内容を考えて掲載、それに対してフリーランサーが応募するというモデルになっています。
一方でFiverrの場合はそれが逆になっているのが特徴です。つまり受注者側が基本的にはパッケージを設定する様なモデルになっています。
下の画像は、アニメーションやゲーム向けの3Dモデル作成パッケージの例です。

仕事(Gig)のカテゴリは、次のように整理されています。
- Graphics & Design
- Digital Marketing
- Writing & Transration
- Video & Animation
- Music & Audio
- Programing & Tech
- Lifestyle
- Industries

この仕組みが、他のサービスの様に発注者が仕事を個別に考えるのではなく、マーケットプレイス上にある仕事(Gig)から任せたい仕事に一番合うものを選んでいくというビジネス体験を提供しています。
2)オンデマンド
仕事を頼みたいときにすぐ頼めるという発注のオンデマンド性です。
オンデマンド性とは、国内のクラウドソーシングにあるような、発注の都度やり取りをしなくてはならないなどの工数を最小限に削減するようなことを言います。
この項目では3つの特徴が挙げられます。
- 大幅なリードタイム削減ができる
- フリーランサーの数が多く、フリーランサーに頼むような仕事は一通り揃っている
- 去の発注者によるレーティングやFiverrのプロ認定により、発注先にするフリーランサーの選定がより簡単に素早くできる
つまり、「必要な時に必要なだけ」仕事を発注できます。
3)End-to-endプラットフォーム
実際に会社がフリーランスに仕事を頼もうとすると結構複雑な手続になります。
フリーランスを探す→面接→コンペ(相見積もり)→スコープ・金額・納期をすり合わせ→契約書作成→契約を締結→仕事発注→検収→納品→請求書発行→支払い…といった流れです。
これは発注者側も大変ですし、自分で雑務も含め全てのタスクをこなさなければいけないフリーランサーにとってはこれらを全て行うのは大変な工数です。
Fiverrはそのような面倒な業務を包括的にプラットフォーム上で行うことができるように設計がされています。
また、フリーランサー側では、E-Learningで自分のスキルを高めたり、営業用のロゴを作ったりなどといった仕事を受注する前段階からの作業もFiverr上で行ったりすることができます。

Fiverrは2件のM&Aを行っており、And.coというフリーランス向けの業務管理ツール、ClearVoiveというコンテンツマーケティングプラットフォームをサービスラインに加え、マーケットプレイス以外でのマネタイズも強化しています。

3)グローバルコミュニティ
Fiverrは既に160か国に展開がなされており、その広がりの大きさは評価できるポイントだと思います。
アメリカのみならず、南アフリカや中東、欧州諸国など本当に様々な国から仕事を受注でき、フリーランサー側にとってはグローバルでレバレッジを効かせて仕事ができるのは非常にメリットを感じられるポイントです。
日本の場合はアプリはダウンロードできるものの、日本語対応はしておらず、まだ日本円での報酬のやり取りもまだできない状態のようです。
日本は経済規模は大きいものの、フリーランス文化が稀薄という点で本格参入が劣後しているということかと思います
ビジネスモデル

ビジネスモデルは、BuyerとSellerの間で仕事の受発注がなされる時の、支払い手数料になります。
Buyer側から5%、Seller側から20%、の合計25%の手数料をとっています。
マーケット・ユーザー(顧客)
Fiverrの考える米国市場でのTAM(獲得可能な最大市場規模)は、100億ドルを想定しています。

Fiverrの顧客は、フリーランサーになります。

仕事単価は20~30ドル台の小規模なものが多いのですが、には1ショット100万円近い値段設定もあります。
Buyerの年間支出額では、2020年に入ってからもQごとに7ドルずつ成長しており、このペースで成長すれば2020年Q4では198ドル(YoYの成長率16%)になります。
2020年Q2と2019年Q1を比較すると157ドルから184ドルの18%成長であり、まだまだ客単価の成長は止まっていないという事は言えます。
テイクレート(売上÷GMV)のレートは徐々に増加傾向にあります。
コホート図
下のグラフから、年度ごとのユーザーの加入・離脱状況がわかります。

2010年〜2013年ごろに獲得した薄いコホートも今でも一定数が売上として残っていることが分かります。
完全に発注者をリテンションし続けることはできないまでも、一定の層に対しては極めて強いリテンションが働いていることが分かります。
新しいユーザーほど離脱率が高くなっていることが気になります。
ライバル・競合他社
Fiverrが日本に参入してきた場合、クラウドワークスやランサーズ、ビザスク、ミーミルなどのサービスとどの様に戦っていくのかは気になるところです。
グロース(成長)株か?バリュー(割安)銘柄か?
- 前四半期のYoY売上成長率が80%
- 粗利率が80%

この株は未来の「GAFAM」のようなテンバガー株になりうるか!?
以下のグロース株5つのポイントに沿って確認してみましょう。
- 増収増益か?
- 株価チャートが持続的な上昇トレンドか?
- 時価総額が比較的小さいか?
- 今の株価(バリュエーション)は、割高か割安か?
- 将来の「成長ストーリー」は良好か?
1) 決算が予想を上回っているか?
EPS(一株あたり利益)

直近の2020年Q2決算では、EPSが予想EPSを「0.17ドル」上回っています。
2019年6月IPO後、一度も決算の取りこぼしのない超優良企業です。
似たような企業にZM(ズーム)が挙げられます。
2020年 2Q決算 | 実績 | 予想 |
---|---|---|
EPS(一株利益) | 0.10 ドル | -0.07ドル |
Q3ガイダンス | コンセンサス予想 |
---|---|
EPS(一株利益) | 0.06 ドル |
売上高成長率
直近の2020年Q2決算では、売上高が予想売上高を「$10.59M」上回っています。
- 2020年Q1まではYoY+40%成長
- 2020年Q2になってYoY+82%成長に跳ね上がっています。
2020年 2Q決算 | 実績 | 予想 |
---|---|---|
売上高 | 47.13M ドル | 36.54M ドル |
売上成長率YtoY | +81.88% | – |
Q3ガイダンス | コンセンサス予想 |
---|---|
売上高 | 49.00Mドル |
売上成長率YtoY | – |
売上高の伸びの理由として考えられるのは、
- フルタイム雇用者が失業しフリーランス市場の供給が増えた
- 会社側も解雇を行ったものの、仕事は引き続き存在するので、仕事の外注化をいう需要も増えた
- コロナによるゲームチェンジに対応すべく、ECサイト構築やWebサイト構築、SNSマーケティング、コンテンツ作成などの分野で需要が爆発的に増えた
以上のことから、YoY+80%台の売上成長は一過性のものである可能性があります。
利益率(Margin)
FVRR | |
---|---|
Gross Margin(粗利率) | 80.70% |
Operating Margin(営業利益率) | -17.30% |
Profit Margin(純利益率) | -16.00% |

COGS には固定費も変動費もそれぞれ混合されています。
卸売業や小売業であれば、変動費と COGS はほぼ等しい関係にあります。一方、サービス業や製造業では、人件費や工場経費が COGS に含まれるため、多くの固定費が COGS に入ります。
経営コストの内訳

- G&A(一般管理費)とR&D(研究開発費)は基本的には固定費
- 通常は中々対売上比率が減らないS&M(営業マーケ費)とCOGS(売上原価)の比率がこの数年で大幅に低下している(実は比較的固定費比率が高いコスト構造になっているのではないか)
- 固定費比率が高く、変動比率が低い場合、限界利益率が極めて高いビジネスモデル(損益分岐点を超えた後は急激に利益額が成長するという構造)
- 現状は損益分岐を超えている
2) 株価チャートが持続的な上昇トレンドか?
理想的な右肩上がりのチャートを示しており、現在の株価水準は175〜180ドルを推移しています。
下のチャートは、FVRRの価格帯別出来高になります。
120ドル付近と30ドル付近に層があることが分かります。

3)時価総額が比較的小さいか?
現在の時価総額は6.03億ドル(2020/10/6)
4) 今の株価(バリュエーション)は、割高か割安か?
現在の株価は割高
現在の株価 : 173ドル

28倍
= 6.03億ドル(時価総額) / 0.213億ドル(コンセンサス予想ベースNTM売上高)
成長率や粗利率が似ているTeladoc(TDOC)は、LTMベースで、約23倍。Livongoとの合併発表で下がる前は26〜28倍くらいの水準
- 【SNOW】Snowflake – 134x
- 【FROG】JFrog – 52.7x
- 【ZM】Zoom – 49.3x
- 【DDOG】Datadog – 46.6x
- 【BIGC】BigCommerce – 44.8x
- 【BILL】Bill.com – 44.4x
- 【SHOP】Shopify – 41.7x
- 【COUP】Coupa Software – 37.8x
- 【ZI】ZoomInfo – 37.6x
- 【CRWD】Crowdstrike – 36.3x
64.58%(40%以上)
= 81.88%(売上高の成長率YtoY前年同期比) + -17.3%(営業利益率)
これらの算出方法については、下の記事で解説しています。
5) 将来の「成長ストーリー」は良好か?
総論として全般的に良い会社で今後も成長は続けると思うのですが、バリュエーションも割高感が否めず、10/28の決算で少しでもミスすると急落する可能性がありそうなので、一旦は10/28の決算を見て考えるといったスタンスがおすすめです。

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