次の4つの視点に着目して紹介していきます。
- 「時価総額」:今後の上昇余地
- 「チャート」:価格推移、PSR
- 「テーマ性」:事業の将来性
- 「業績」:決算の良否、成長率
企業概要
モデルナは、2010年設立、2018年12月上場のバイオテクノロジー企業です。
同社のメッセンジャーRNA(mRNA)技術は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの開発で、その有効性が即座に実証され、2020年12月に米国で承認されました。
モデルナは、メッセンジャーRNA(mRNA)で新たな領域を切り開いたことから、「バイオテック界のテスラ」とも言われています。
時価総額 | 125.9Bドル |
ティッカー | MRNA [NASD] |
会社名 | Moderna, Inc. |
業種 | ヘルスケア バイオ |
設立 | 2010年 |
IPO(上場) | 2018年 12月 |
CEO | テファン・バンセル氏 (2011年ー) |
本部 | アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 |
従業員数 | 1300人 |
単位:T=1兆、B=10億、M=100万
テーマ性(事業内容)
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが2021/7/16、モデルナをS&P500種株価指数の構成銘柄に採用する計画を発表しました。
実は、希少疾患用医薬品の開発を手掛ける米アレクシオン・ファーマシューティカルズが採用される予定だったそうですが、除外され、代わりにモデルナが加わりました。アレクシオンは英製薬大手アストラゼネカに買収されることで合意しています。
会社ビジョン
シンプルに会社のミッションとして、次のように説明されています。
患者さんのために新世代の革新的な医薬品を生み出すために、mRNAサイエンスの可能性を実現すること。
From S-1
マーケット
2021/5月時点では、新型コロナワクチンの世界中への供給を2022年までに最大30億回分に拡大するために追加投資を決定したと報道されています。
モデルナは自社と提携先製造施設での投資を2021年内に開始し、これらの投資による生産量拡大は2021年遅くから2022年初めに反映され始める見込みです。
また、モデルナは5/1、2021年の製造能力の予測を8億〜10億回分へと引き上げました。
新型コロナウイルス変異株が急速に拡大していることを踏まえ、モデルナのmRNA新型コロナワクチンと変異株向けブースターワクチン候補薬への大きな需要が2022年と2023年にも継続すると考えています。
各政府からは、mRNAワクチンの優れた有効性と変異株に対応するために必要なスピードをもって製造能力拡大を信頼できる形で進めることのできる技術がないと聞かされています。
モデルナは本日、スペイン、フランス、およびベルギーを含む欧州と米国での投資により、基本ワクチンと変異株向けブースターワクチンの割合がどのようになるかの状況に応じて、2022年には最大30億回分の供給が可能となることを発表しました。
製造を受け持つ提携先各社の努力と取り組みに感謝しています。モデルナはこれら各社と共に、このパンデミックを可能な限り早急に終わらせることができるよう、クラス最高の変異株向けブースターワクチンの開発を継続します。
モデルナの最高経営責任者(CEO)であるステファン・バンセル(Stéphane Bancel)氏
サービス・商品
モデルナ社のメッセンジャーRNA(mRNA)技術は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの開発で、その有効性が即座に実証され、2020年12月に米国で承認されました。
米ファイザー(PFE)× 独バイオンテック(BNTX)連合、英アストラゼネカに次いで、日本で3社目となる新型コロナウイルスワクチンの製造販売承認申請を行っている米モデルナが、抗体の持続期間に対する追加分析結果を発表しました。
2回目接種のおよそ6カ月後について、90%以上の高い有効性を確認し、さらに重症化の予防に限っては95%以上の有効性が示されています。
そのほかには、2021年初め時点で、24のmRNA開発プログラムを有し、このうち13プログラムの臨床試験が進められています。
プログラムは、感染症、がん、循環器疾患、稀少な遺伝子疾患など、広範な療法分野を対象としています。
ビジネスモデル
モデルナはワクチンの供給を開始した2020年12月以降、2021年3月末までの4カ月間に、累計1億1600万億回分を出荷しています。
- アメリカ国内向けに供給されたのが1億200万回分
- 国外向けは1400万回分
- アメリカ国内向けに販売された8800万回分の平均価格は、15.4ドル(1650円前後)/1回
- コロナワクチン10億回分は、売上高が190億ドル(約2兆900億円)に相当
ロイターによると、競合するファイザー/バイオンテックがアメリカ政府と結んだ販売契約は「2回分で39ドル」とのことです。
また、モデルナは、マサチューセッツ州に自社のバイオ工場を持っており、ワクチンの量産を行なっています。また、大量生産のためにスイスのバイオ薬生産下請け会社・ロンザとワクチン生産委託契約を交わしています。
モデルナにとってコロナワクチンは始まりにすぎず、mRNAがうまく機能すれば、心疾患やがん、希少な遺伝子疾患などほぼ全ての領域で治療が可能な新たな巨大産業が誕生すると、以前から指摘されています。
米政府、ワクチン特許の放棄に支持表明
バイデン米政権は 5/5 、新型コロナウイルスワクチンに関する特許規定の緩和を支持すると表明しました。
世界的な供給の拡大や、富裕国と貧困国のワクチン格差縮小につながる可能性があるこの提案については米国内で集中的な論議が行われ、米製薬会社は強く反発していました。
当局者によると、ワクチン特許をめぐってタイ代表らは貿易相手国や医療専門家、労働団体、大手ワクチンメーカーなどの関係者と協議を重ね、バイデン大統領に選択肢を提示。最終的にバイデン大統領が公約に従って特許放棄の支持を決断したとのことです。
ただし特許規定が直ちに緩和されるわけではなく、規定を緩和するかどうかについてはWTO 加盟国が全会一致で決定する必要があります。欧州連合(EU)やスイスなどの加盟国はこの措置に抵抗しているようです。
モデルナ公表、変異株対応を 3 回目に接種「抗体が増加」
新型コロナウイルスのワクチンを開発した米バイオ企業モデルナは5/5、3 回目の追加接種によってブラジル型や南アフリカ型の変異株に対する抗体が多くなることを確認した、とする臨床試験の初期の結果を公表しました。
発表によると、モデルナ製のワクチンを2 回接種し、6-8 カ月が経過した 40 人の血液を調べると、40 人中 37 人は通常の新型コロナに対する抗体は高いままでした。
一方で、約半数はブラジル型と南ア型の変異株に対する抗体が検出できなかったということです。
この 40 人を 2 グループに分け、1、2 回目と同じワクチンと、新たに開発した変異株に対応したワクチンをそれぞれ追加接種した。2 週間後に血液を調べたところ、変異株に対する抗体が増えたことが全員で確認できたということです。
変異株に対応したワクチンを打った方がより効果がある傾向も確認されました。深刻な副反応はなく、これまでの臨床試験で報告されているのと同様だったようです。
ステファン・バンセル CEO は「変異株に対して、ブースター(追加免疫)効果をねらうという戦略について自信を深めるデータだ」とする声明を出しました。
売上構成比
地域比
ライバル・競合他社
モデルナとmRNA分野のライバルである企業は、米ファイザー(PFE)×独バイオンテック(BNTX)です。
最初にワクチン承認を達成したのは、独バイオンテックス(BNTX)でしたが、ADR銘柄(海外の企業)のため、S&P500の選定基準の対象になっていません。
今後の展開予想
コロナ感染拡大のの周期は3-4ヶ月なので、そろそろピークアウトして、次は11月から12月くらいに再拡大すると予想されます。
またコロナピークアウトと併せて モデルナ (MRNA)バイオンテック (BNTX) も一旦株価ピークになり、年末のコロナ拡大に併せて再度買われていく相場展開になるかもしれません。
業績
業績指標サマリー
指標 | |
---|---|
売上成長率(YtoY) | +22990% |
ROA(総資産利益率) | 8.50% |
ROE(自己資本利益率) | 19.80% |
ROI(投資利益率) | -28.40% |
Gross Margin(粗利率) | 92.60% |
Operating Margin(営業利益率) | 23.20% |
Profit Margin(純利益率) | 21.90% |
M = Mllion(100万)
B = Bllion(10億)
決算
バイデン米政権が新型コロナワクチンの特許権の一時放棄を支持すると5/5に表明し、収益減につながったため、2021 年 1-3 月期決算の売上高が市場予想(20 億 6000 万ドル)には届きませんでした。
売上高は販売実績がなかった前年同期と比べ 242 倍の 19 億 3700 万ドルで、このうちコロナワクチンが 17 億ドルを占めました。
最終損益は 12 億 2100 万ドルの黒字(前年同期は 1 億 2400 万ドルの赤字)、1 株利益は 2.84 ドルと市場予想(2.39 ドル)以上でした。
2021年 Q1 決算 | 決算良否 | 予想 | 実績 |
---|---|---|---|
EPS(ドル) | ○パス | 2.34 | 2.84 |
売上高(ドル) | ×ミス | 2.223B | 1.937B |
売上成長率(YoY) | +22990% | ||
営業キャッシュフロー(ドル) |
21 年 12 月期通期のワクチンの売上高見通しを 192 億ドルと従来予想から 4%上乗せされています。
2021年 Q2 予想 | コンセンサス (アナリスト予想) | ガイダンス (会社予想) |
---|---|---|
EPS予想(ドル) | 5.89 | |
売上高予想(ドル) | 4.26B | |
売上成長率(YoY) | ||
Q2ワクチン提供 | 2-2.5 億回分 | |
2021通期ワクチン提供 | 8-10 億回分 | |
2022通期ワクチン提供 | 4.66 億回分まで |
収益性
売上高成長
会社の安全性
キャッシュフロー(CF)
C/Fでは主に安全性を確認できますが、3つのC/Fのうち最も重要なのは、営業C/Fです。健全な企業では営業C/Fの金額よりも当期純利益が低いのが一般的です。
投資C/Fは設備投資や株式投資をした場合にマイナスで現れます。そのため、マイナスになっているほうが積極的に投資をしている企業と言えます。
フリーC/Fは営業C/Fと投資C/Fを足したものをです。これがプラスの場合は投資に現金を使っていても、それ以上の現金を営業C/Fで稼ぎ出していることを意味します。
チャート
バリュエーション
IPO後初値 22 ドルから、+ 1300 %の価格帯で推移しています。
価格帯別出来高
直近のサポートラインは、216ドルとなっています。
PSR推移
指標 | |
---|---|
PER(LTM) | 210.5倍 |
PER(NTM) | 10.9倍 |
PSR(LTM) | 43.5倍 |
PSR(NTM) | 5.1倍 |
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