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WISH深掘り
以下のポイントに沿って、公式資料から抜粋して深掘りしていきます。
1)Business
マーケット
米アマゾンに出店するショップの総数と、年間取引額100万ドル(約1億円)以上のショップ数について、中国からのが昨年1月に初めて米国を上回りました。さらに今年1月、新規出店の75%は中国のショップだったようです。
米国と欧州で半々くらいの売上となっており、Wishがターゲットとしているのは中間所得者層です。この中間所得者層は、世帯年収が7.5万ドル以下で、米国の42%、欧州では85%、中国やインドを除いても世界全体では10億人以上もいます。
アフリカ、中東、南米、東ヨーロッパに限っていうと、平均世帯年収は約18,000ドルであるため、非常に価格に敏感であるということです。
WishのMAU1億人、年間購入者数(UUベース)6,700万人、そのうち43%ものユーザーが世帯年収5万ドルのミレニアル世代です。
ビジネスモデル
Wishはいわゆるマーケットプレイス型のECモデルです。出品者が販売したい商品をWishに掲載し、消費者に購入されたら、商品代金から一定の手数料が引かれた額が出品者に支払わます。
Wishの売上構成比(2020年1Q〜3Q)は、
- コア・マーケットプレイスからの手数料収入:74%
- Wish内での広告掲載料からの収入は7.8%
- Logisticsセグメント(物流サポート・サービス)の売上は17.6%
Wishの最大の特長は「激安」で、ノーブランド品を主に扱っており、ナイキ風の靴やレゴ風の子供向けおもちゃなどの数多くのノーブランド品が数十ドルで購入することができます。
その激安の価格設定を可能にしているのは、中国をはじめとするメーカーや工場などの出品者で、Wishを通じて中間流通業者(卸など)を介さずに直接ユーザーに販売することでその安さを実現しています。
Wishの2020年12月期第3四半期(1-9月)の収入全体の74%はマーケットプレイスからの手数料となっています。
テクノロジー
スマホに特化したEC
独自のアルゴリズム(機械学習)
成長性
Wishが設立された2010年には既にAmazon(米国)やAlibaba(中国)など先行するECサービスの巨人が確固たる地位を築いているレッドオーシャンの中で、後発組のECサービスでありながら、強い成長を見せています。
- 2020年12月期第3四半期(1-9月)までの売上高$1.7Bil(前年同期比:+32%増)
- ユーザー数:5億人
- MAU:1億人
- 出店者数:50万社
- 100ヵ国以上でサービスを展開
売上成長率
2015年12月期の売上はわずか144Mドルであったのに対して、そこからCAGR(年換算成長率)90.6%で成長し、2019年12月期には1,901Mドルまで成長しています。
足元の業績では、2020年12月期第3四半期(1〜9月)までの売上高1.7Bドル(前年同期比:+32%増)とその成長は続いていますが、3Qに焦点をあてると、コロナの影響を受けて3Qの実績は2Qと比べて150Mドル(2Q対比: ▲27%)落ち込んでいます。
つまり、コロナ禍において巣ごもり需要を追い風に北米ではAmazonやShopify、EtsyをはじめとするECサービスが更なる売上高成長をしている最中、Wishはその恩恵を受けられていません。
2020年のMAU(Monthly Active Users)は順調に伸びていますが、バイヤー数はほとんど成長しておらず、それが利益成長の鈍化に繋がっているように見えます。
* EBIT=税引前当期純利益+支払利息-受取利息
EBITDA=税引前当期営業利益+減価償却費
キー・マイルストーン
Wishは、2010年の設立以来、数百万人のユーザーと販売者をつなぐ市場を拡大し、プラットフォームの収益化を改善し、プラットフォームを新しいサービス、チャネル、カテゴリにさらに拡張するために多額の投資を行っています。
Life time value
私たちの成功は、ユーザーを引き付けて購入者に変えると同時に、効率とマーケティングの支出と努力を最適化する能力に部分的に依存しています。ユーザーを効果的に関与させ、費用効果の高い方法でユーザーを購入者に変えることができないと、当社の収益成長と経営成績に悪影響を及ぼします。
Wishは、Life time value(LTV)とbuyer acquisition cost (BAC) にフォーカスした取り組みを行なっています。
*LTV = 特定の年に獲得した新規購入者(「コホート」)に起因する一定期間の累積粗利益を、そのコホートで取得した新規購入者の総数で割ったものとして定義
*BAC = 特定の期間におけるアプリの新規インストールを対象としたデジタル広告費用の合計を、同じ期間に獲得した新規購入者の数で割ったものとして定義
バイヤー一人当たりの売上は、年を追うごとに鈍化する傾向があるようです。
コンペティター(競合)
Eコマース市場は激戦区となっていて、WISHのほかに
- AMZN – Amazon
- EBAY – ebay
- WMT – Walmart
- SE – shopee
- SHOP – shopify
- ETSY – Etsy
- BABAーAlibaba(Aliexpress)
- PDDーPinduodo(中国)
- Joom App
などそうそうたる面々となっていて、これからの競争環境はより厳しくなることが予想されます。
AMZNとの違い
Amazonとは真逆のサービス設計をしています。
AMZN | WISH | |
優先順位 | 1ユーザー体験(配送や利便性など) 2商品の品質 3価格 | 1価格 2商品の品質 3ユーザー体験(配送や利便性) |
しかしながら、AMZNでもWISHのような商品が購入できるようになっており、完全なる差別化はできていません。
目下の課題はいかに認知を高めて、ユーザーの生活に入り込めるかがキーになると思います。
この記事の情報ソース
↓公式の資料
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