こちらの記事で、中国の今後の動向予測について解説しましたが、中国株投資を始める前に、投資リスクについても知っておきましょう。
中国株の投資リスク
中国株への投資リスクとして、大きなものでは次の4点が挙げられます。
- 政治リスク
- 会計リスク
- 相場リスク
- 不動産バブル崩壊リスク
1)政治リスク
中国政府による制裁
例:アリババ暴落事件(2020年)
10月下旬の講演会でのCEOの(中国政府や銀行への古い規制などへの)発言が原因で、中国当局に幹部が関連規制当局から聴取を受け、上場を控えたアリババ傘下のアントが上場延期になりました。
しかし、これはCEOの発言が要因ではなく、デジタル人民元という「国策通貨」の普及にまっしぐらの金融当局にとって、強力なライバルになりうるアント・グループなどのスマホ決済は「用なし」どころか排除すべき「禍根」だという見解もあります。
香港での資金調達をアメリカが問題視した場合
中国の軍事産業が資金を集める道具として香港の株式市場が使われるという脅威とみなされた場合、資金が止まるなどのリスクがあり、中国株の暴落に繋がっていきます。
2)会計リスク
例:ラッキンコーヒーの例
中国全土で店舗展開をしていて、スタバ【SBUX】を超えるのでは無いかと言われていた、ラッキンコーヒーとう言う企業がありましたが、こちらは粉飾決算が原因であっという間に倒産してしまいました。
3)相場リスク
次の項で解説しますが、中国には日本人を含む外国人が投資できない株式市場があります。その相場で異常な盛り上がりを見せることがあります。
B株祭り
本土市場には、A株B株があり1日10%の値幅制限があります。憶測や噂でB株市場の全銘柄が3日に渡りストップ高を演じ、それが根も葉もないただの噂だと分かると今度は3日連続のストップ安を演じるという大相場がありました。
この時は、3日目の朝方では10%高で買い注文が成立しない状態で、引けには逆に-10%で売りが成立しない凄まじい状況がありました。これが両B株市場の全銘柄に起こりました。
直通車相場
直通車とは制度改正により、本来中国人が買えない香港株を中国人が直接買えるようになるという憶測による相場です。
AH格差がある銘柄はもちろんのこと中国人に人気のありそうな銘柄は片っ端しから買われて株価が以上に上がり、香港株は値幅制限がありませんので、恐ろしい事態を招きました。
4)不動産バブル崩壊リスク
現在の中国の富裕層の資産配分はは、債権や株式が主流であるアメリカとは違い、不動産が最も高い比率になっています。
これは、「株式は不透明である」ことと、これまで中国は不動産バブル崩壊を経験したことがないことから「不動産神話」*が確立されていることが主な要因です。
*不動産神話=不動産を持っていれば、将来必ず価値が上がるという考え
しかし、現状の中国では土地は購入できず国から70年とかの期間で土地の利用権を国から購入して、その上に上物(建造物)を建てる仕組みになっています。不動産デベロッパーによっては、作れば売れるだろうという杜撰な計画のもと、国から土地を借りて開発を行なっていますが、これが「中国の巨大なゴーストタウン」を作り続ける要因になっています。
このような不動産デベロッパーが火の車で、末期的なところは借金で借金を返すという状態になっています。10%以上の以上な金利のもと借入を行っています。それだけでは、間に合わないのでまだ建っていないものを担保にお金を借りたり、まだ建っていないのに物件を売ってしまうという状態になっています。香港を発端にこのような事例が、2年くらい前からすでに崩壊がはじまっています。
例えば北京のとある不動産では、120人もの不動産投資家が、多い人で7000万元(約10億円)少なくても億単位の投資をしているが物件を引き渡してもらえず、それが全て資産ではなく借金になっている現実があります。
もし1社でもデベロッパーが破綻したら、中国全土に波及していくと考えられ、かつての日本のようなことが起こることが考えられます。
中国独特の市場の棲み分け
中国株へ投資できるマーケット
細分化するといっぱいありますが大きく分けると5つに分けることができます。
博打好きな中国人の主戦場でバリュエーションがめちゃくちゃ高くボラも大きい市場です。昔からある企業でA株とB株に同時上場をしている企業も多いですが基本的に同じ企業でもA株の株価がB株の株価より高いです。これをAB格差と言います。
外貨獲得を主眼に置いた外国人向けの市場で取り扱い通貨も上海B株が米ドルで深センB株は香港ドルなので中国人はほとんど買わないし、昔の外貨獲得が目的だったこともあり新規IPOはなく魅力的な企業も少ないのでいわゆるオワコンのような感じのマーケットになります。
中国人は普通には香港株が買えません。基本的に日本の証券会社からできる中国株投資先はこちらになり、B株はオワコンの要素が高いため相当の物好きの人以外は必然的に投資先は香港株ということになります。香港株は次のように分けられています。
H株 | 香港証券取引所およびGEMに上場している中国国営企業 |
---|---|
レッドチップ | 香港証券取引所に上場し、中国の資本で香港に本社がある企業で、主要事業地は主に中国本土 |
その他 | 香港(メインボード)市場に上場している、H株、レッドチップ以外の企業 |
それぞれ香港メインボードに上場されていて、メインボード以外に新興市場に当たるGEM市場というものもあります。
中国人が不満なのは、中国人は香港に数多くある中国でビジネスしているけど登記がタックスヘイブンでされているためA株には上場できない優良な企業に投資できないことです。自分たちの誇りでもあるテンセントのような企業に投資ができないんです。
中国株へ投資する2つの方法
例えば、アリババは米国市場(BABA)でも香港市場(9988)でも購入可能です。
どちらでも株価推移はほとんど同じですので、どちらにするかは資産をどの通貨(ドル建て、香港ドル建て)で持ちたいかで決めることができます。
米国市場のチャート
香港市場のチャート
取引ルール
日本市場との違いについて
日本株市場と香港株市場では以下の点で大きな違いがあります。
単元株(1回で取引できる最低株数のこと)は米国と中国では違いがあります。
例えば、同日のアリババ株を購入する場合、米国で265ドル/1株から購入できるのに対して、香港では251香港ドル/1株となっており、購入するには50,200香港ドル(251×200株)が必要になります。
- 投資可能な最低金額の例:
- USドル(104円/USドルの場合)265ドル × 104円 = 27,560円
- 香港ドル(14円/香港ドルの場合) 251Hドル × 14円 × 200株 = 702,800円
米国株取引 | 中国株取引 | |
---|---|---|
通常取引(ザラ場) | 現地時間で9:30~16:00 | 前場 : 現地時間9:30~12:00 後場 : 現地時間13:00~16:00 ※休憩時間 : 現地時間12:00~13:00 |
1.寄付値の決定方法 | プレ・マーケット (現地時間 8:00〜9:30) | プレオープニング・セッション (現地時間 9:00~9:30) |
2.引値の決定方法 | アフター・マーケット (現地時間 16:00〜20:00) | クロージング・オークション・セッション (現地時間 16:00~16:10) |
3.受渡日 | 約定日から起算して3営業日目 | 約定日から起算して3営業日目 ※国内約定日・受渡日は日本および現地(香港) 両方の営業日である日にもとづきます。 |
4.一般的な単元株数 | 1株 | 200株 |
5.配当金の権利確定日 | 発行会社の決算日 | 毎年変わる |
6.値幅制限 | なし | なし(ストップ高・安もなし) |
中国株の取引ができるオンライン証券口座
中国株の取引ができる主要ネット証券は次の3社になります。
マネックス証券 | SBI証券 | 楽天証券 | |
---|---|---|---|
取引手数料 | 約定金額(香港ドル)の0.25% | 約定金額(香港ドル)の0.26% | 約定金額(円)の0.5% |
最低手数料 | 45香港ドル(約630円) | 47香港ドル(約658円) | 500円 (約定金額10万円まで) |
最大手数料 | 450香港ドル(約6,300円) | 470香港ドル(約6,580円) | 5,000円 (約定金額100万円以上) |
ちなみに私は、マネックス証券の中国株手数料は主要ネット証券3社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券)において、業界最安水準となるためそちらを利用しています。
中国株銘柄選びかた
港股通で優良銘柄を見つける方法
滬港通(上海・香港ストックコネクト)と深港通(深セン・香港ストックコネクト)
中国人が香港株を、外国人が本土A株を制限があるものの買うことができる制度、滬港通(2014年)、深港通(2016年)が始まりました。
つまりこれまで、中国人と外国人では投資できるマーケットが分けられてきましたが、B株祭りや直通車相場を引き起こした中国人投資家の大軍と同じマーケットで投資することになります。
中国人投資家 | 外国人投資家 | |
---|---|---|
滬港通(上海・香港ストックコネクト) | 上海市場を経由して一部香港株を1日に制限株数があるものの買える港股通(滬)(上海コネクト・サウスバウンド) | 香港市場を経由して上海A株を買う滬股通(上海コネクト・ノースバウンド) |
深港通(深セン・香港ストックコネクト) | 深セン市場経由で香港株を買える港股通(深)(深センコネクト・サウスバウンド) | 香港経由で本土A株を買える深股通(深圳コネクト・ノースバウンド) |
この制度は現在進行形で、発足時に比べてどんどんアップデートされています。昨年10月には小米集団(シャオミ、Xiaomi)や美団点評(現在は美団)なども投資対象に加わりました。
ここで注目すべきなのが、
- 港股通(滬)(上海コネクト・サウスバウンド)
- 港股通(深)(深センコネクト・サウスバウンド)
の中国人投資家による香港株の買い付けです。つまり、中国人マネーが入る銘柄を見つければ大きく上がる可能性があるということです。
しかし彼らが、両港股通で買える銘柄は限られてます。国からあらかじめ選ばれた一部の優良企業に中国人は本土経由でアクセスできます。そして参加できる中国人や投資額にも制約があるのが現状です。
出来ればこの中でも中国人の興味の高い人気のある銘柄への投資を考えたいところです。そしてこれは中国株の投資情報の二季報WEBで港股通の両市場の売買代金上位10銘柄を見れば、簡単に分かります。
国策に売りなし法
中国株はこの要素が他のどの市場よりも顕著で重要になってきます。そして、業界のNO.1企業に投資しろという格言もありますが、こちらも中国株では他の市場よりも明らかに重要度が高く関連が深いです。
例えば、国策銘柄の代表格がワクチン銘柄で早くから入った人は爆益を抱えている人も少なくなさそうです。
ワクチンが失敗する可能性も高く失敗すれば売り上げは全然見込めず、研究&製造などに莫大なコストがかかるワクチン銘柄に多くの人が投資する背景に、トランプ政権下のコロナワクチンのワープスピード計画があります。
こういうワープスピード計画のような国が民間企業をバックアップする施作が中国の場合いつも常にある状態です。例えば、
- 「5カ年計画」
- 「一帯一路」
- 「中国製造2025」
などがあります。
つまり、
- 新エネ車関連
- 5G関連
- 最新のAI技術関連
がこれに当たります。
その際、気をつけておきたいのが次の点です。
- 中国の株式指数の多くは時価総額の大きい国営の全く成長しない効率の悪い企業のせいでほとんど大きく動かない
- 民営の力のある企業は国策などの追い風を受けるともうびっくりするくらいの業績面の成長をとげる
重要なことは業界の「NO.1企業への投資」を心がけることです。
中国では経済効率が最優先で弱者保護といったヌルい考えは一切ありません。目標達成のためにもっとも効率の良い一部の大手企業を優遇し、そこにお金をかけあっという間に目標達成を躊躇なく最短距離で狙ってきます。だから他国より圧倒的にスピーディで効率がいい国力アップが実現可能なのです。
「高い株ほどよく上がる」
中国株の名人で直木賞作家、台湾から帰化された邱 永漢 氏 画像引用:『週刊公論』1960年7月16日号より
圧倒的なNo.1がいる分野は特に最大手の株を買うことが成功の近道です。これは、アメリカ株にも当てはまると思いますが中国株は特に顕著だと思います。
香港の本土完全返還について
まだまだ先のことのようですが、香港の本土完全返還がいずれ起こる可能性が高いです。中国政府は、徐々に移行期間を経て香港を中国に完全併合していくつもりだと思います。
そうなると遅かれ早かれ香港市場の銘柄への一般中国人の自由な売買はいずれ来る可能性があり、その時に今まで自由に買えなかった反動が一部の人気優良銘柄の爆買いに繋がる可能性は高いのかなとも思います。
これらを強く意識してこれら全部に合致する企業に出会えたら、迷わずゲットするのがいいかと思います。
おすすめポートフォリオ
米国株を利確したり追加投資のタイミングで、徐々に新興国の比率を増やしていくと良いと思います。
米国80%:新興国20% → 米国50:新興国50