市場の方向感
- 米国株の鈍化懸念
- ドル安の加速懸念
- 中国のデフォルト事件
- 中国の急激な景気回復
- 世界の投資家たちは米国株から中国株へのシフトしている
米国株の鈍化懸念
2020年12月NASDAQ総合指数が過去最高値を更新しました。これは、コロナ禍の中で好調だったハイテク株の上昇トレンドが未だに揺らいでいないことを示唆しています。
これは、シクリカル銘柄である航空株やホテル株、百貨店株やエネルギー株などが壊滅的な打撃を受ける中で、ハイテク株(NASDAQ)だけはコロナ渦が業績の追い風になり資金が集中したためです。
新型コロナワクチンを一般の国民が接種できるのは、2021年春先以降になることを考えれば、ハイテク株の企業業績は2021年の第3四半期(7−9月)までは期待できますから、短期的に見れば株高はまだまだ続くことが期待できます。
ただし、2021年の第3四半期以降は前期がコロナの影響で業績が拡大したため、今期はコロナが収束していることが予想されるわけですから、売上高が大きく落ち込むことが予想されます。
これが確認できるシナリオは、サポートラインである12,100ポイントを反発して再び上昇トレンド入りした場合です。
そして、株価は将来の業績を先回りして織り込む可能性がありますから、ハイテク株の株高が続くのは第一四半期決算の発表が本格化する2月までとなり、大きく調整が入るかもしれません。
ドル安の加速懸念
2020年現在ドル安円高が加速していますが、これは日本から米国株に投資する投資家にとって不利になります。
なぜなら、せっかく株高による値上がり益を手にしても、為替差損で利益が相殺されかねないからです。
また、ドルの米国外への流出が加速する可能性が高まっていることも、ドル安がますます進む理由の一つとして挙げられます。
USD指数チャートを見ると、91.97をサポートラインに3度反発しており、仮にこのサポートラインを下に突き抜けると、2018年の88.15まで一気に加速する可能性があります。

下のチャートはドル円のチャートですが、101円/ドルをサポートラインに反発していることが分かります。仮に、サポートラインを下回るようであれば一気に85円をターゲットに円高が加速する可能性があるので米国株投資家は覚悟する必要があります。

仮に2020年12月10日以降に、新型コロナワクチンが承認されれば、投資家がコロナ禍のためリスクが高く売られてきた新興国株やコモディティを買い向かうことが予想されます。
また、実現されるかどうかは分かりませんが、バイデン政権による巨額のインフラ投資は財政懸念を高めることに繋がりかねませんから、これもドル安を加速させる要因になります。
さらにドル指数には、15年周期があることもドル安加速がこれから始まることを予感させます。下のチャートは、過去50年のドル指数の推移を表したものですが、7〜9年の間に交互に上昇と下落を繰り返すパターンがあることが分かります。
仮に2016年を起点にすれば、これから7〜9年間後の2023〜2025年にかけてドル安が続く公算が大きいと言えます。

ちなみに、ドル指数が低迷した1990年代前半と2000年代半ばはいずれも新興国株が投資家の間でブームになっていましたから、これから訪れるドル安局面は再び新興国株投資がブームになることを示唆していると言えそうです。

これまで、2011年以降、米国株が一貫して強かったことから、個人投資家の間では「為替リスクを考えても、米国株へのみ投資すればいい」との意見が多かったですが、これからの数年間はそうはならない可能性が高いです。
つまり、米国株のみでなく新興国株に投資しリスク分散することも考えなくてはなりません。
米国株を手放す必要はありません
米国株は長期的なパフォーマンスは良いはずなので、調子が悪いからといってすぐに手放す必要はありません。
新興国株投資というのは永久にバイアンドホールドするものではありませんから、これまで投資してきた米国株をそのままホールドしつつ、これから投資する分を新興国株に振り向けることで、ポートフォリオのバランスを、とる方法でもOKです。
PF例 「米国80%:新興国20%」 → 「米国50%:新興国50%」
中国のデフォルト事件
11月24日には、中国の国有企業3社が相次いでデフォルトを起こしたことで、社債市場を大きく揺るがしました。
これらの、国有企業は社債の格付けがAAAと最上級で、財務は一見すると健全のように見えましたし、いざとなれば政府が支援してくれるだろうと楽観的に見られていたので、政府に見放されたことから多くの投資家にとって寝耳に水でした。
これは、他の社債に投資している投資家にとって、自分の保有している他の国有企業の社債も本当に大丈夫か?と不安を煽り、投資に消極的になったり、さらなるデフォルト連鎖を引き起こす可能性があります。
ただし、これが直ちに中国経済に大打撃を与えるわけではないと言えます。
なぜかというと、中国当局が国有企業を支援しなかったのは、支援するだけの体力がなかったためではなくて、新型コロナウィルスのパンデミックが落ち着いて、中国での景気が持ち直してたことで、国有企業がいくつか破綻したとしても、中国経済がそれを吸収できるくらいに強くなったと、自信を深めていることに他ならないからです。
中国の急激な景気回復
景気指数
中国の経済指標は急回復していて、中国の鉱工業生産指数は急回復していることが確認できます。
鉱工業生産指数というのは、中国の製造業や鉱業部門における生産動向のことで、中国経済を見る上で非常に重要な指標になります。
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また、中国の購買担当者景気指数も、「景気拡大と縮小の分岐点である50」を上回ったことで、製造業が拡大していることがわかります。

早期回復の理由
なぜ、新型コロナウィルスの発生源となったとされている中国が世界に先駆けて大きく回復しているのかというと、コロナを封じ込めることに成功した他、景気刺激策によるインフラ事業が拡大しているからです。
つまり、政府が国民に仕事を与えて、お金をばら撒くことで経済を急回復させています。
コロナ渦の中では、世界経済が低迷しているので、モノに対する需要が消滅していますから、いくらモノを作っても輸出することができません。そこで、中国政府はインフラ事業を拡大させることで、需要を生み出したわけです。
新型インフラ建設
中国のインフラ事業は決して中身の無いものではなくて、今回のインフラ投資は「新型インフラ建設」というもので、スマート道路やスマート鉄道など、交通インフラのデジタル化・スマート化・高度化を進めるというものです。
これは、中国が今回のコロナ危機をきっかけに一気に高度化する可能性があることを示唆しています。
世界の投資家たちは米国株から中国株へのシフトしている?
下のチャートは、2005年以降のIVV(S&P500ETF)/FXI(中国株ETF)の比較チャートで、チャートが下落すると中国株の割合が高くなり、反対に上昇すると米国株が中国株に対して買われていることを意味します。
2011年の長期線のゴールデンクロスが発生しているあたりから10年にわたって、一貫して「米国株>中国株」の関係が続いてきたことがわかると思います。

現在、これまでのトレンドは崩れていませんし2015年や2018年のように指数が持ち直す場合があることを考えると必ずしも、2020年を起点に中国株投資の時代が始まると言い切れるわけではありません。