企業概要
以下のグロース株5つのポイントに沿って、確認していきます。
■ 会社について ■
『需要』市場・マーケット
固定されたロケーション前提だった従来の電話システムは現在の働き方(モバイル・分散化)のニーズを満たしておらずクラウド導入が勢いづいています。
レガシーベンダーの従来のソリューションを利用してきたPublic Storage(現在の顧客)が従来は1年かかっていたところリングセントラルでは2週間少々で米国2300拠点に導入できたということで、完全クラウドベースで先行投資しているリングセントラルとはスピードに違いがあります。
また、リングセントラルは市場リーダーであり、ビジネスコミュニケーション、チームメッセージング、ビデオ、コンタクトセンターなどコラボレーションを組み合わせることができる統一プラットフォームで、統合ソリューションを求めている企業の引き合いも強いようです。
『供給』サービス・商品
RingCentralのサービスはUCaaS(Unified Communication as a Service)と呼ばれ、クラウドベースのアプローチにより、分散したオフィス、リモートワーカー、スマートフォンとタブレットの普及をサポートするコミュニケーション・ソリューションを提供しています。
プラットフォームは、今日のモバイルおよび分散型の従業員にフォーカスして、ゼロから設計されています。
ユーザーフレンドリーに設計されたソリューションは、迅速に導入でき、設定や管理も簡単です。直感的なグラフィカルユーザーインターフェースにより、管理者やユーザーは、ITの専門知識やトレーニング、専任のスタッフをほとんど必要とせずに、ビジネスコミュニケーションシステムの設定や管理を行うことができます。
顧客は、従来のオンプレミス型システムと比較して、所有コストを大幅に削減できる。
RingCentral Office
主力ソリューションである『RingCentral Office』は、通信ソリューションを必要とする企業向けに設計されています。
高精細音声、ビデオ、SMS、メッセージング、オンライン会議、ファックスを含む複数のモードでのコミュニケーションとコラボレーションを提供し、企業は、スマートフォン、タブレット、PC、デスクフォンで複数のオフィスで働くユーザーをシームレスに接続することができる。
『RingCentral Office』は、Essentials、Standard、Premium、Ultimateの4つのエディションで販売されています。
音声、通話管理、モバイルアプリケーション、ビジネスSMSとMMS、ファックス通信を1つのビジネスナンバーで実現します。
売上構成・ビジネスモデル
主にサブスクリプション収益、製品の販売、およびプロフェッショナルサービスから収益を得ています。
Subscriptions Revenue(サブスクリプション収益)
顧客にRingCentralのソフトウェア・アプリケーションおよび関連サービスへのアクセスを提供する料金から発生します。
これらの契約期間は通常1ヶ月から5年であり、定期的な固定プランのサブスクリプション料と、プラン限度額を超えた利用に対する変動利用料が含まれています。
Other Revenue(その他の収益)
事前設定済み電話機の販売、専門的な実装サービス、電話機のレンタルから生じる収益があります。
販売戦略
RingCentralは主に、2つの販売チャンネルを持っています。
- 直接販売部隊 ー 米国や世界各地にいるインバウンドとアウトバウンドの直販担当者を通じて、ソリューションとサブスクリプションを販売
- 間接販売チャネル ー ブランドを売り込み、ソリューションを販売する
間接販売チャネルは、再販業者、AT&T、TELUS、BTなどの通信キャリアの地域的およびグローバルなネットワークから構成されています。間接販売チャネルは、大規模な直販部隊なしにソリューションの採用を拡大するのに貢献しています。
パートナーシップ
- 2018年10月 ー ラウド型デジタル顧客エンゲージメントプラットフォームDimeloを買収
- 2019年1月 ー 中堅、大企業向けの企業向けのアウトバウンド型顧客エンゲージメントプラットフォームであるConnect Firstを買収
- 2019年10月 ー Avayaとの戦略的パートナーシップのための一定の契約を締結し、Avayaとその子会社が販売する新しいソリューション『ACO(Avaya Cloud Office by RingCentral)』を導入
- 2019年12月 ー Atosとの間でシステムインテグレーター関係の構築と、共同ブランドの「UCaaS(Unified Communications as a Service)」ソリューションの導入を含む契約を締結
投資リスク
ライバル・競合他社
従来のレガシーベンダーとして次の企業が挙げられます。
- Alcatel-Lucent(仏アルカテル・ルーセント)
- Avaya(米アバイア)
- Unify(独ユニファイ)
- Cisco(米シスコ・システムズ)
シスコは2017年にクラウドPBX・コンタクトセンターソリューションを提供するBroadSoftを19億ドルで買収するなど補強しています。
このようなレガシー企業に対し、リングセントラルはユーザー中心かつモバイルファーストでチームメッセージングとクラウドPBXを統一プラットフォームで提供し、オープンプラットフォーム戦略で他社のアプリとの統合もディープなのが強みです。
競合は
- 8×8
- Amazon(Amazon ConnectとAmazon Chime)
- Dialpad
- Fuze
- StarBlue
- Intermedia.net
- j2 Global
- Jive Communications
- Microsoft(Microsoft Teams)
- Nextiva
- Slack
- Vonage Holdings
- West Corporation
などが挙げられます。
■ 業績について ■
1) 決算が予想を上回っているか?
EPS、売上高
IPO後一度も決算の取りこぼしのないピカピカ銘柄です。
直近の2020年Q3決算では、EPSが予想EPSを「0.02 ドル」、売上高が予想売上高を「16.27 Mドル」上回っています。
2020年 Q3 決算 | 予想 | 実績 | |
---|---|---|---|
EPS(一株利益) | 0.24ドル | → | 0.26ドル |
売上高 | 287.35M ドル | → | 303.62M ドル |
売上成長率YoY | +30.11% |
Q コンセンサス | 会社予想 |
---|---|
EPS予想 | 0.27 ドル |
売上高予想 | 317.35Mドル |
売上成長率YoY | +4.5% |
M = Mllion(100万ドル)
B = Bllion(10億ドル)
利益率(Margin)
Gross Margin(粗利率) | 81.00% |
Operating Margin(営業利益率) | -7.60% |
Profit Margin(純利益率) | -9.80% |
キャッシュフロー(CF)
投資の世界で営業キャッシュフロー・マージンが15パーセントから35パーセントぐらいある会社は、バランスシートもきれい。
★売上高から原材料費などの支出を引いたことによって得られる現金収支のことを営業キャッシュフロー。それを売上高で割り算した数字が、営業キャッシュフロー・マージン。
2) 株価チャートが持続的な上昇トレンドか?
理想的な右肩上がりのチャートを示しています。
下のチャートは、価格帯別出来高(上段左灰色グラフ)になります。
3) 今の株価(バリュエーション)は、割高か割安か?
- PSR(TTM)= 過去12ヶ月売上ベース
- 一般的にはこれが使われている。Yahoo Financeなど
- PSR(FWD)=アナリストの来年予測ベース
- 未来のPSRを指し示す
- PSR(×4)=直近の売上 × 4 「=ARR(Annual Recurring Revenue))」
- おそらく日本のローカルルール
- 主にSaaS銘柄に使用
- 決算後すぐに計算でき、早く動ける
ARRはMRR(四半期売上×4 or 月間計上収益を×12)から算出することができます。
※重要ルール
- 同じデータソースを使う(Yahoo Finance、Finviz、その他でちょっと違う)
- PSR種類を必ず揃える (TTMが標準)
- 同じ性質の会社と比べる (EコマースとSaaSは違う)
- 利益(EPSが+)が出ていないグロース企業のみに適用できる (目安は100B以下、米グロースは利益の多くを先行投資する傾向のため)
- 利益(EPSがー)の場合はPERを使う。日本企業の場合が多い。
この記事の情報ソース
↓公式のS-1資料