小型株のもつ景気回復の初期にアウトパフォームする傾向
これまで5年間、Nasdaq100はS&P500や日経225を大きくアウトパフォームしてきました。
しかし、過去20年間をみると、実は1番成績が良いのはNasdaq100、次いでRussell 2000指数になります。
さらに、直近1ヶ月をみると1番成績が良いのはやはりRussell 2000指数になります。
Russell 2000指数とは、アメリカの小型株指数です。米国の小型株ファンドの約95%がベンチマークとして採用されることから景気に敏感に反応する傾向にあり、「暴落の先行指標」や「炭鉱のカナリア」とも呼ばれています。
最近、市場がグロース株からバリュー株へと乗り換える兆しが見えており、小型バリュー株はその真っただ中にあります。10月1日以降、ラッセル1000グロース・インデックスが2.4%上昇したのに対し、ラッセル2000バリュー・インデックス は14%の上昇となりました。
さらにいま小型株に注目するのには、次の2つの理由があります。
小型株には「プレミアム」 が埋め込まれている
小型バリュー株は過去に何度か印象的な株価上昇を遂げてきた実績があります。小型株には「プレミアム」 があり、長期的には大型株や市場全体をアウトパフォームする傾向があるということは、多くの研究によって裏付けられているようです。
1926年から2014年までの市場リターンに基づくと、最も小さな銘柄群はリスク調整後で、市場全体に対して平均4.3%ポイントのアウトパフォームとなっている。研究によれば、大型株、小型株を問わず、バリュー株には割高なグロース株よりも高いプレミアムがあることが分かっている。
ニューヨーク大学のアスワス・ダ モダラン教授
過去最低水準のバリュエーション
今、小型バリュー株に注目するもう一つの理由は、過去最低水準のバリュエーションである。ルーソル ド・グループによれば、小型バリュー株は戦後の平均バリュエーションに対して60%のディスカウ ントとなっており、これほど割安だったのは他に一度だけだということです。
これは、バリュエーションが非常に落ち込んでいるため、もしアウトパ フォームしなくても打撃は小さくて済むということを意味しています。
小型バリュー株ETFに注意
投資家は、インデックスに追随する上場投資信託(ETF)を通じて小型バリュー株に投資することができます。
しかし、小型バリュー株ETFには、保有銘柄のほとんどが収益性の低い小売り、エネルギー、金融株であるという欠点があります。小型株は、大型株ほどウォール街のアナリストに広くカバーされているわけではないため、株価が正当な評価を受けていない企業が多く存在し、それらの株式がアウトパフォームする潜在的な機会も大きいのです。
以下の5社はいずれも成長中の黒字企業ですが、ほぼ見過ごされています。
注目のバリュー5銘柄
【SP】SPプラス
駐車場運営や空港交通サービスを手掛ける会社です。
- 新型コロナウイルスのパンデ ミックにより営業損失を計上し、株価は年初来で38%下落
- SPはコストを大幅に削減
- ロックダウンの最中 の第2四半期と第3四半期のフ リーキャッシュフローはプラス
- パンデミック初期を生き残れなかったライバル事業者からサービス契約を獲得
- 多くの小規模事業者がまだ導入していない非接触決済システムを採用して競争力を向上
「公共交通機関を利用するよりも車で通勤する人が増え、駐車場サービスの需要が 高まるだろう」
ノース・スター・マイクロ・キャップ・ファンド<NSMVX>の共同マネジャーであるエリック・ クービー氏
- 平均目標株価は33ドルで、直近株価の約26ドル(金曜終値は27ドル)に対する 上値余地は27%
- アナリストによる予想1株当たり利益(EPS)は、来年は1.28ドルだ が、2022年には2.14ドルにほぼ倍増し、急速な回復が見込まれる
- 株価が31ドルとなっても株価 収益率(PER)は14.5倍で、依然として市場平均を大きく下回る
【WTFC】ウィントラスト・ファイナンシャル
小規模銀行は最近、窮地に立たされています。
低金利とイー ルドカーブのフラット化が融資による利ざやを圧迫し、さらにライバルのハイテク金融サービス企業 (フィンテック)が株式取引 アプリやウェルスマネジメン トなどのサービスを通じて預金や顧客を増やしています。また、新型コロナウイルスによ る景気減速が貸出や資産価値 を圧迫している可能性もあります。
しかし、地方銀行のウィントラスト・ファイナンシャル は、窮地を乗り切っているようです。
- 過去5四半期で、貸出額は64億ドル増加し て320億ドル、預金は70億ドル増加して350億ドル
- ウィントラストの予想EPSは、金利が低水準にとどまるとの予想を反映して、今年は4.32ドル、来 年は4.08ドルとされている
- しかし、経済が回復してインフレ率が上昇すれば、イールドカーブがスティープ化し、2022年の利益は増加する可能性がある。同年の予想EPSは4.67ドル
「選挙以来、イールドカーブはスティープ化している。新型コロナウイルス による懸念が払拭(ふっしょく)されるか、景気刺激策が成立すれば、貸し出しの質は改善するだ ろう」
BMOキャピタル・アセット・マネジメントの米国ディシプリンド・エクイティ部門責任者であるデー ビッド・コリス氏
株価は大幅な成長を織り込んでおらず、株価有形純資産倍率は1倍で、過去5年平均の約60%の水準にあります。同行は、シカゴ地域最大の独立系銀行の一つであり、同地域でのプレゼンスを求める大手銀行にとっては魅力的な買収対象となる可能性があります。
【ACU】アクメ・ユナイテッド
アクメ・ユナイテッド(Acme United Corporation)は、コネチカット州フェアフィールドに本社を置く、切削加工や学校・家庭・オフィス向け応急処置製品の供給事業を行う企業です。
事業グループはアメリカ(アジアを含む)とカナダ、ヨーロッパの3部門で、アメリカ・カナダ・ヨーロッパ事業はおもに製品開発とマーケティング、販売、管理・配布活動を、アジア事業は調達や製品開発、生産計画、品質管理、営業活動を行っています。
- パンデミックの間、アクメの売り上げは実店舗からオンラインチャネルへと移行する中で増加
- 従業員を1人も一時解雇しなかった
- 同社製品は大手小売店で陳列棚のスペースを確 保し、市場シェアを獲得
- はさみの売り上げはオフィス用から家庭用や工芸用へとシフト
- 売上高の半分を占める救急・安全キットの需要も堅調
- バーコード技術と遠隔注文を使用して法人顧客の消耗品を自動的に補充しているため、企業は場当たり的な配送を30%削減することができる
- カナダで事業を拡大しており、最近はケベック州の救急キットのサプライヤーを買収
- ドイツの子会社を通じて欧州でも成長中
- 中国製の製品の一部は関税による打撃 を受けており、その状況はバイデン政権下でも続く公算が大きい
- 民元が 対ドルで上昇していることから、来年は関税を相殺するために価格を引き上げることになるだろう
「多くの課題があるが、当社は好調な業績を挙げる態勢が整っているだけでなく、機会があれば実際に行動できると確信している」
ジョンセンCEO
- 2021年予想PERは11.7倍で、同年のEPSは前年比13%増加すると予想されています。
【CCS】センチュリー・コミュニティーズ
センチュリー・コミュニティーズ(Century Communities, Inc.以下CCS)は、戸建て付属住宅と一戸建て住宅の開発、設計、建設、マーケティング、販売の会社です。
- 今年の住宅販売は驚くほど堅調に推移している
- それでも住宅着工件数は、人口統計のトレンド が示唆する新規世帯の形成件数を下回っている
- CCSは、初めて購入する住宅の需要による恩恵を受けるとみられている
- 同社が今年引き渡した住 宅の平均販売価格は31万4000ドルで、売上高の3分の1は価格16万2000ドルの住宅によるもの
- CCSーの住宅引き渡し件数は、今年は約9500戸、2021年は16%増の1万1000戸になる予想
「低コスト 住宅への動きを利用している」
「大都市中心部から郊外への脱出は続くだろう。
低金利もしばらく続く公算が大きく、住宅価格は手頃だ」
バリュー投資会社ハートランド・アドバイザーズのビル・ナスゴビッツ会長
- 株価は年初来で51%上昇しているにもかかわらず、2021年予想PERは7倍
- 来年の利益は18%増加すると予想されており、その場合のPEGレシオは0.4倍という低水準
【AAWW】アトラス・エアー・ワールドワイド
アトラス・エアー・ワールドワイド・ホールディングス(以下AAWW)は、株価が今年上昇している数少ない航空会社の一つです。
- アジアなどの地域から米国に貨物を輸送
- 他の航空会社による旅客便の本数が減る → 旅客機の貨物積載量が減少 → アトラスの収入が急増
- Amazon(AMZN)は、AAWWの発行済み株式の5%に相当する130万株を所有
- さらに、Amazonは最大40%の株式を 取得するためのワラントも保有
- 航空会社は旅客便の本数を急速に増加させ、貨物輸送能力を拡大する可能性
「アトラスは急成長しているEコマース、速達サービス、従来の航空貨物という三つの中核市場で強力な地位を築いている」
ロイスのヘンチ氏
- 2021年予想PERは6倍で、同社の株価は割安に見える
- ヘンチ氏は、堅調な需要の傾向と、新型コロナウイルスワクチンの空輸などの新たな収益源の可能性を踏まえ、運賃の急落はなく、経済の正常化は恩恵をもたらすと予想している
参考:デルタ航空の場合
- 現在、週20本の国際 貨物便を運航しているが、アナリストはアトラスの売上高と利益の減少を既に織り込んでいる
- DALの予想EPSは、今年は11.76ドルで、来年は8.64ドルへの減少が見込まれる。
お疲れ様でした!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
皆様も健康な投資ライフをお過ごしください。
今後も良い記事を書いていきたいので、引き続き応戦よろしくお願いします!