個人事業主と法人はそれぞれ異なる特性を持ち、ビジネス目標やニーズに応じて最適な形態を選択することが肝要です。
このページでは、個人事業主と法人の比較や違いをまとめて解説しています。
個人事業主と法人の比較（メリットデメリット）
個人事業主と法人の違いは、個人事業主は個人で事業を営む形態であり、法人は法律によって権利や義務を認められた組織です。それぞれには以下の特徴があります。
個人事業主
- メリット
- 社会的信頼度が高い
- 経費にできる範囲が広く柔軟
- 一定の所得を超えたら、所得税よりも節税になる
- デメリット
- 事業開始までの手続きが多く、費用もかかる
- 赤字でも税金の支払いがある
- 経理・人事管理が煩雑
法人
- メリット
- 節税メリットが大きい
- 社会的な信用が高く、取引や金融機関審査で有利
- 社会保険に加入可能
- デメリット
- 設立に登記が必要で費用がかかる
- 経理や法令順守が必要
選択時の考え方として、見込み取引先や資金調達方法、利益額などを考慮し、自身のビジネスプランに合った形態を選択することが重要です。
法人化は一般的に年間所得や売上が一定水準を超えた際や資金調達が必要な場合に推奨されます。
個人事業主と法人の手続きの違い
個人事業主と法人の手続きの違いは以下の通りです。
個人事業主
- 開業手続き: 個人事業主は開業届を提出するだけで事業を始めることができます。特に資金は必要ありません。また、確定申告時には「白色申告」と「青色申告」の選択があり、青色申告では税金の控除額が多くなりますが、複雑な記帳が必要です。
- 税金: 個人事業主は所得税が課せられます。所得額が増えるほど税率も高くなりますが、赤字経営となっても所得税や住民税の負担はありません。
法人
- 設立手続き: 法人の場合、法務局で設立登記を行った後に税務署へ開業届を提出する必要があります。法務局での手続きには時間とコストがかかり、20万円程度の費用がかかります。
- 税金: 法人には法人税が課せられます。法人化すると、法人税制度を利用して節税効果を得ることが可能です。また、従業員の分も含めて健康保険や厚生年金に加入する必要があります。
これらの違いを考慮して、個人事業主と法人の手続きを選択する際には、それぞれの特性やメリット・デメリットを検討することが重要です。
個人事業主と法人の税金の違い
個人事業主と法人の税金の違いは以下の通りです。
個人事業主
- 所得税がかかります。個人事業主の利益は「事業所得」として計算され、この利益全体に所得税が課されます。
- 生活費は必要経費とはならず、利益全体に所得税がかかります。
法人
- 法人税がかかります。会社の利益に対して「法人税」という税金がかかります。
- 経営者である社長に支払う役員報酬は経費として認められ、残った利益に法人税がかかります。 役員報酬には所得税もかかります。
個人事業主と法人では、所得に対する税率や節税メリットが異なります。法人税率は一律であるため、実効税率が所得税より低くなることがあります。
また、法人の節税効果は高く、所得額や地域ごとの住民税、法人住民税などによっても異なります。具体的な判断は、起業時に税理士に相談することが推奨されます。
個人事業主と法人の税金の税率の違い
個人事業主と法人の税金の税率の違いは以下の通りです:
個人事業主
- 個人事業主は所得税が課されます。所得税は累進課税であり、所得額が大きくなるほど税率も高くなります。最大の税率は45%です。
法人
- 法人は法人税がかかります。法人税の税率は一律で、平成28年4月1日以降開始事業年度では23.4%、平成30年4月1日以降開始事業年度では23.2%に引き下げられました。中小法人には19%の優遇税率も適用される場合があります。
個人事業主と法人では、所得に対する課税方式や税率が異なります。個人事業主は所得に応じて段階的に増加する所得税率が適用される一方、法人は一律の法人税率が適用されるため、所得が増えるほど法人化による節税効果が高まります。
個人事業主と法人の税金の節税メリット
個人事業主と法人の税金の節税メリットの違いは以下の通りです。
個人事業主
- 個人事業主は所得税がかかり、節税メリットは限定的です。所得に応じて段階的に増加する所得税率が適用されるため、高額な利益を得ると高い税率が課されます。
法人
- 法人は法人税がかかり、節税メリットが大きい特徴があります。法人税率は一律であるため、所得が増えても一定の税率が適用され、実質的に節税効果が高まります。特に収益が一定水準を超えると、法人化による節税効果が顕著になります。
法人化することで、法人税率の一律性や経費計上の柔軟性から、高額な利益を得た際により効果的な節税が可能となります。個人事業主と比較して、法人化は節税面で有利な選択肢と言えます
個人事業主と法人の税金の節税メリットの具体的な例
個人事業主と法人の税金の節税メリットの具体的な例は以下の通りです。
法人化による節税メリット
- 法人税率の適用: 法人は一律の法人税率が適用されるため、所得が増えても一定の税率が適用されます。例えば、資本金1億円以下で所得が800万円を超える法人の税率は23.2%、所得が800万円以下なら15%です。このように、所得が増えるほど法人設立による節税効果が高まります。
- 役員報酬: 法人化すると、役員報酬を損金計上できます。個人事業主の場合は事業所得全体が課税対象となりますが、法人化すると法人の資産と個人の資産は別々に扱われるため、役員報酬を経費として計上できます。これにより、節税効果を享受できます。
法人化による節税メリットは、法人税率の一律性や経費計上の柔軟性から生じるものであり、具体的な利益額や経営状況に応じて節税効果が異なります。これらのメリットを活かすためには、事業状況や目標に合わせて適切な節税戦略を検討することが重要です。
個人事業主と法人の税金の節税メリットを実現するために必要な手続き
個人事業主と法人の税金の節税メリットを実現するためには、以下の手続きが必要です:
法人化
- 役員報酬の支払い: 法人化して会社の利益を役員報酬として支払うことで、法人所得を減らし、個人としての所得を圧縮することができます。これにより、所得税などの課税計算上で節税効果が生まれます。
- 退職金の損金計上: 法人化すると、従業員への退職金も損金として認められるため、法人所得を減らす効果があります。個人事業主の場合は退職金は必要経費にできないため、法人化による節税効果があります。
- 欠損金の繰越控除: 法人化すると欠損金の繰越控除可能期間が長くなります。大きな赤字が生じた場合でも、法人では9年間から10年間まで欠損金を繰越控除できるため、節税効果が高まります。
これらの手続きを適切に行うことで、法人化による節税メリットを最大限に活用することが可能です。
個人事業主と法人の社会保険の違い
個人事業主と法人の社会保険の違いは以下の通りです。
個人事業主
- 国民健康保険: 個人事業主は国民健康保険に加入します。国民健康保険は、地域によって金額が異なり、扶養制度がないため、所得に応じて保険料が変動します。個人の負担が大きくなる特徴があります。
法人
- 社会保険: 法人は社会保険に加入します。社会保険には健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5種類があります。法人化するとこれらの社会保険に加入することが義務付けられます。社会保険料は個人単位で計算され、親族を扶養することも可能です。
社会保険に加入するメリットとデメリット
個人事業主と法人の社会保険に加入するメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
- 社会保険料の削減: 個人事業主と法人を掛け持ちすることで、社会保険料を削減できます。法人で受け取る報酬のみが社会保険料の対象となるため、個人事業主の所得を増やして法人での役員報酬を減らすことで、社会保険料を削減することが可能です。
- 節税効果: 個人事業主と法人の両方で節税を行うことができます。両者の税制が異なるため、それぞれのメリットを活用できます。例えば、個人事業主として青色申告特別控除を受けることや、法人での役員報酬として給与所得控除を受けることが可能です。
デメリット
- 社会保険料負担増加: 法人化すると社会保険に強制加入する必要があり、その負担が重くなります。健康保険や厚生年金に加入することで負担が増えるため、給与から天引きされる金額や法人負担分が増加します。特に初期段階では負担が大きくなります。
- 手続きや管理の煩雑化: 個人事業主と法人を掛け持ちする場合、手続きや管理が煩雑になる可能性があります。掛け持ちによる手続きや管理の複雑さに備えてしっかり準備を行う必要があります。
これらの要素を考慮して、個人事業主と法人の社会保険に加入する際はメリットとデメリットをバランスよく検討することが重要です。
